上の挿入絵は、「アラーニャ洞窟」の採蜜壁画です。約8000年前のものと推定されています。
Wikipedia(アラニア洞窟)より抜粋しました。

 日本では、近代以前、養蜂は産業となっていませんでした。奈良時代に、「養蜂をやってみたが失敗した」という記録が残っています。その後、蜂の蜜が、朝廷に献上されることもありました。江戸時代後期には、和歌山の山間部で養蜂が行われていましたが、産業化には程遠かったようです。最大の要因は、日本在来種のミツバチが飼育に向いていなかったからです。
 明治に入り、海外からセイヨウミツバチが導入されると、状況は一変します。養蜂家が日本全国に増え、事業として成り立つようになったのです。しかし、戦後の1963年、はちみつ輸入の自由化に踏み切ります。この結果、海外の安いはちみつとの競争にさらされた国内養蜂業は、厳しい状況に追い込まれました。今日、はちみつは「健康にいい」「美味しい」と大人気ですが、消費される9割以上が輸入蜜です。それでも、国民一人当たりの消費量は、まだアメリカの半分ほど。他のアジア諸国でも、伸びる余地はこれからです。日本の養蜂業は、ここに勝機を見出したいものです。
 国内の蜜源植物に目を転じてみましょう。はちみつとは、蜂だけでなく、植生の豊かさにも依拠します。その点で、日本の植生には可能性が感じられます。四季折々の蜜源植物が咲き乱れ、各地で多様な風味を楽しめるからです。春から初夏にかけては、アカシア、レンゲ、桜、菜の花、ミカンなど。夏には、栗、ヒマワリ、キハダ、ソバ。秋になると、アザミ、ゴマ、コスモス。冬でもサザンカやビワ、ヒイラギが蜜源となっています。大量生産の基盤がない日本だからこそ、個性的豊かなはちみつを見出し、世界に発信していくべきでしょう。イマイチだった日本の養蜂の「大逆転劇」が楽しみです。

 少し、変わった日本地図の見方をご紹介しましょう。日本の四島を俯瞰したとき、その中心はほぼ石川県あたりになります。それが意味することは、国内の東西南北の植生が、いいバランスで交わっているのです。石川県・長野県・岐阜県には、養蜂に恵まれた諸条件が整っています。蜜源植物が多岐に渡り、蜂を飼いやすい「里山」が存在します。人里と山の麓がほどよい距離で、一定の人口もある。筆者が独断と偏見で申し上げるなら、そんな日本の中心三県に対し、養蜂業への投資を積極化させたいです。
 その石川県の金沢市に拠点を置く「金澤やまぎし養蜂場」は、約100年の歴史を有し、次の100年をみすえた活動に入っています。もともと雪深い北陸は、蜂にとって過酷な環境でしたが、越冬方法を工夫するなどして、乗り越えてきました。もともと熱帯作物だったコメが、日本に伝来し、北陸を日本の穀倉地帯に変えたように、人々の努力は、養蜂業への明るい未来にもつながることでしょう。同社は、養蜂の仲間を増やしたい、はちみつ事業で提携できるパートナーを得たいと考えています。その事業も、石川県から日本全国へと広がりつつあります。本稿の締めとして、「やまぎし」の事業及び商品にも触れておきましょう。

 日本では、近代以前、養蜂は産業となっていませんでした。奈良時代に、「養蜂をやってみたが失敗した」という記録が残っています。その後、蜂の蜜が、朝廷に献上されることもありました。江戸時代後期には、和歌山の山間部で養蜂が行われていましたが、産業化には程遠かったようです。最大の要因は、日本在来種のミツバチが飼育に向いていなかったからです。
 明治に入り、海外からセイヨウミツバチが導入されると、状況は一変します。養蜂家が日本全国に増え、事業として成り立つようになったのです。しかし、戦後の1963年、はちみつ輸入の自由化に踏み切ります。この結果、海外の安いはちみつとの競争にさらされた国内養蜂業は、厳しい状況に追い込まれました。今日、はちみつは「健康にいい」「美味しい」と大人気ですが、消費される9割以上が輸入蜜です。それでも、国民一人当たりの消費量は、まだアメリカの半分ほど。他のアジア諸国でも、伸びる余地はこれからです。日本の養蜂業は、ここに勝機を見出したいものです。
 国内の蜜源植物に目を転じてみましょう。はちみつとは、蜂だけでなく、植生の豊かさにも依拠します。その点で、日本の植生には可能性が感じられます。四季折々の蜜源植物が咲き乱れ、各地で多様な風味を楽しめるからです。春から初夏にかけては、アカシア、レンゲ、桜、菜の花、ミカンなど。夏には、栗、ヒマワリ、キハダ、ソバ。秋になると、アザミ、ゴマ、コスモス。冬でもサザンカやビワ、ヒイラギが蜜源となっています。大量生産の基盤がない日本だからこそ、個性的豊かなはちみつを見出し、世界に発信していくべきでしょう。イマイチだった日本の養蜂の「大逆転劇」が楽しみです。

 少し、変わった日本地図の見方をご紹介しましょう。日本の四島を俯瞰したとき、その中心はほぼ石川県あたりになります。それが意味することは、国内の東西南北の植生が、いいバランスで交わっているのです。石川県・長野県・岐阜県には、養蜂に恵まれた諸条件が整っています。蜜源植物が多岐に渡り、蜂を飼いやすい「里山」が存在します。人里と山の麓がほどよい距離で、一定の人口もある。筆者が独断と偏見で申し上げるなら、そんな日本の中心三県に対し、養蜂業への投資を積極化させたいです。
 その石川県の金沢市に拠点を置く「金澤やまぎし養蜂場」は、約100年の歴史を有し、次の100年をみすえた活動に入っています。もともと雪深い北陸は、蜂にとって過酷な環境でしたが、越冬方法を工夫するなどして、乗り越えてきました。もともと熱帯作物だったコメが、日本に伝来し、北陸を日本の穀倉地帯に変えたように、人々の努力は、養蜂業への明るい未来にもつながることでしょう。同社は、養蜂の仲間を増やしたい、はちみつ事業で提携できるパートナーを得たいと考えています。その事業も、石川県から日本全国へと広がりつつあります。本稿の締めとして、「やまぎし」の事業及び商品にも触れておきましょう。